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第19話 名前を口に出せなくなる瞬間

Penulis: marimo
last update Tanggal publikasi: 2026-06-18 22:56:20

 スタジオを離れた帰り道、俊哉はほとんど口をきかなかった。

 車内には、エアコンの乾いた音だけが流れている。

 「……さっきの、なに?」

 耐えきれなくなったように、玲奈が言った。

 その声には、苛立ちと、見下すような響きが混じっていた。

 「完全に無視じゃん。感じ悪すぎ!!」

 「……無視じゃない」

 俊哉は、ハンドルを握る手に力を込めた。

 だが、それ以上の言葉が続かない。

 「じゃあ、なに?」

 「……仕事中だっただけだ」

 嘘ではない。

 だが、真実からは、意図的に目を逸らしていた。

 玲奈は、ふっと鼻で笑う。

 「ふーん。あの女、あれでしょ?」

 俊哉の指が、わずかに震えた。

 「この前まで家政婦してた、“元カノさん”、でしょ?」

 その呼び方。

 かつて、ひかるが俊哉の家で、名もない家政婦のように扱われていた頃、

 玲奈がわざと使っていた言葉だった。

 ――元カノさん。

 ひかるが見ている前で、俊哉に腕を絡め、キスをしてみせたこともある。

 わざと、聞こえる距離で甘い声を落とし、

 存在を誇示するように夜の営みを、ひかるに聞かせるように過ごしたこともあった。

 そのときの
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